いつもご指導いただいているコンサルタント・
小柳剛照先生は、
全国紙『商業界』で連載をされております。
今回もまたまた、大変勉強になることを書かれております。
掲載許可をいただいていないけど、
先生と私の仲ですから、おそらく許していただけるでしょう。
ここで少し紹介させていただきます。
《第123話》ウォンツの作り方
消費者ニーズに応えること。それは商業者にとって、もっとも基本的な、大切な心得です。でも今の時代は、ニーズに応えるだけの商いでは不安があります。その理由は二つあります。
一つは、日本中が、オーバーストア状態に陥っていること。商業売場面積は、人口一人あたり1平方メートルが適正規模といわれますが、全国ほとんどの場所で、その目安をとっくに超えています。消費者の財布の中身はほとんど増えず、周囲に店舗だけが増えたとしたら、一店舗あたりの消費金額が減少するのは、当然すぎる話です。
もう一つの理由は、消費者の購買欲求が低下していること。「どうしても買いたい」という飢餓感が乏しく、「なければないでいいさ」と考えがちなことです。たとえば、夕食をカレーにしようという時。台所にジャガイモがなかったら、昔なら急いで、ジャガイモを買いに行ったでしょう。
でも今は、「ジャガイモがないから、今日はカレーはやめるね」という家庭が結構あります。青果店がジャガイモをそろえていても、カレーの献立予定を変えてしまえば、ジャガイモを買いに来てくれません。消費者ニーズに応えるだけでは、今の時代、売れ行きは不確実なのです。
発想の転換
だからぜひ、ニーズ対応に加え、ウォンツ創造を検討したいものです。第87話でも触れましたが、ニーズとは「それがないと困る」というものであり、ウォンツとは、「それはぜひ欲しい」というものです。
ニーズ商品では、購入頻度もかぎられる上、少しでも安いほうで買おうというのが消費者心理。でも、ウォンツ商品ならどうでしょう。価格や購入頻度はあまり関係ないのです。
たとえば『震災時帰宅支援マップ』は、災害が起きた時も、自宅まで歩いて帰れる地図としてヒットしました。この地図の前半分は、通常の「上が北」の地図。水飲み場や休憩できる場所、危険箇所が表示されています。そして後ろ半分は、それぞれのエリア別に、目的地を上にした地図。言い換えれば、自宅が上になる地図でした。
横浜・川崎方面から東京に通勤している人にとって、帰宅時の方角は南西。通常の、上が北の地図では、地図を逆さにしないと、方角がつかみにくいものです。でもこの地図なら、『第一京浜・第二京浜』のページを開き、地図の上を目指して歩けば、自宅にちゃんと帰れます。「上が北」という地図の常識を、「上が自宅」に変えたことで、多くの消費者が「そういう地図なら欲しい!」と感じ、この地図を購入しました。それがウォンツの力です。
セレンディピティ
何かを探しているうちに、意外な価値あるものを見つける能力を、セレンディピティといいます。セレンディピティを磨けば、人ごみ、テレビ、立ち話などをきっかけに、ウォンツ商品を創造する可能性が生まれます。
そのために必要なのは、ウォンツの種を発見する『ハンターの目』。そしてそれを、商品やサービスに作り上げる『耕作者の手』。加えて、魅力を増幅させる『遊び心』でしょう。そう、資金の問題ではなく、目と手と心に磨きをかければいいのですから、中小小売店であっても、ウォンツ創造は可能なのです。
ここから私の持論ですが、
私はお客様を喪失させないものが『ニーズ』であり
お客様を増やすものが『ウォンツ』だと考えております。